【座談】この街で「集楽座」を打ち上げる理由 - 集楽座 Collective Sounds & Cultures

集楽座 Collective Sounds & Cultures

渋谷 代々木公園 野外ステージ アースガーデン“秋”内
2026年10月24日(土)25日(日)
支援参加券TICKET

【座談】この街で「集楽座」を打ち上げる理由

原宿の住宅街にある「SOIHOUSE」に集まったのは、「集楽座」主催の南兵衛、建築・演出を手がける遠藤 治郎氏、アーティストのオーガナイズを担う根木 龍一氏、タカハシコーキ氏の面々。集楽座の公式WEBサイトを手掛けるVISUAL AND ECHO JAPANの宮沢 喬氏(以後、ミッチェ)をファシリテーターに、集楽座がどのように生まれ、何を目指しているのか。その成り立ちから、ここにしかない魅力までを探った。

カオスが生きるこの街で

ミッチェ
ミッチェ

今日はかなり濃いメンバーに集まっていただきましたが(笑)。皆さん、どうぞよろしくお願いします。

南兵衛
南兵衛

ちなみにこれが始まりの写真。今年の1月に代々木公園でミーティングした時ですね。なんかこれ、新しい何かに向かっていく感じがあっていいよね。この右端の人はすごいコート着てるけど、何やる人なんだろうなみたいな(笑)

治郎
治郎

寒かったよ(笑)

タカハシ
タカハシ

代々木公園内のカフェでミーティングしましたね。

キックオフ時からその熱量とグルーヴを確信しあった制作チーム
治郎
治郎

まあ集楽座の話を始めるには、まず渋谷という街の場所性というものから紐解く必要があると思うんですよ。やっぱりここって80年代にホコ天文化があって、竹の子族とかローラー族とか、様々な「群」が動いていた場所だったんだよね。2000年代に入るとゲリラでレイヴみたいなことをやる時代があって、それが全部BANされて。

南兵衛
南兵衛

どんどん規制されるようになったんだよね(笑)

根木
根木

俺、高校生の時代々木公園でBlankey Jet Cityのフリーライブ見たんですよ。あの場所に2万人集まって。

南兵衛
南兵衛

後に「春風」とか「B-BOY PARK」があったり、最近もその当時に近いカオスな感じはあったよね。週替わりで、「今日はミャンマーフェスです」「今日はタイフェスです」みたいな。そういう、なんかよくわからないことになってたりしてて(笑)

治郎
治郎

そういった「群」としてカルチャーが動いていた時代から、世相の流れもあって「個」の時代へ移行するところを、アースガーデンみたいなイベントがその接続を担っていったって感覚が僕にはあるんだよね。つまり渋谷って、その時代その時代のカルチャーや現象をロケーションとして形作ってきた歴史を持っている場所なんだよね。

南兵衛
南兵衛

まさにカルチャーの「るつぼ」みたいな場所だよね。

治郎
治郎

そういう場所のコンテクストがあるからこそ、イベントとして「濃度」を出すというのは常に難しい。その中でアースガーデンもカラーを出そうと試みてはいるんだけれど、「優しい感じ」になってしまっている現状があって。それを今回の集楽座では、もうちょっと乱暴な感じにしてみようというかね(笑)

根木
根木

だから治郎さんに声がかかったんだ(笑)

1995年に初開催したフリーマーケット「楽市楽座」から数えると30年以上の歴史を持つ「アースガーデン」

濃いめアツめで「座」をひらく

治郎
治郎

例えば「橋の下世界音楽祭」って僕もすごく面白いと思ったんだけど。多様な濃度の高いローカルの集積みたいなことを、奇跡的に成功してるというか。普通だったら良くも悪くも一つのカラーになりやすいところを、実に巧妙に回避しているマイルストーンだと思うんだよね。

根木
根木

そうだね。ジャンルにとらわれずいろんなカルチャーがごっちゃに集まっているからね。

「濃度」がみなぎる「橋の下世界音楽祭」の会場
治郎
治郎

でも、じゃあそれを東京の代々木に持ってこようって、なんか違うじゃないですか。東東京でいえばそのローカル感って成立するんだけれど、渋谷ってインターナショナル(多国籍)以前に、全国ローカル(地域)からの脱藩者による、いわば日本の“インターローカル”のメルティングポットなんだよね。

南兵衛
南兵衛

今まで25年間アースガーデンをやってきたんだけど、その中で最高の褒め言葉だなと思ったのが、「アースガーデンって温泉みたいだよね」って言葉なんだよね。

治郎
治郎

ぬるま湯ってこと?(笑)

南兵衛
南兵衛

いや(笑)。ほどよくみんなが集まって、ふわっと気持ちよく過ごせるというか。でも、コロナ禍以降平熱感がずっと続いていて。やっぱりその温度をもう一度上げなきゃいけないかなと思ったんだよね。あと、公園の規制緩和で有料の企画もOKということになったのも大きいよね。でも、商業に偏った中途半端なイベントも既にちらほら出てきていて。この場所をこれまで見てきた身としては、「早く先手を打たねば」みたいな懸念もあるわけです。

「優しさ」溢れるアースガーデンの会場
治郎
治郎

公共の場所を商業化することは、行政も推し進めているわけだけど。結局そこに代理店が入り、助成金があり、結果的に「どうよ?」みたいなものが立ち上がっていく。でも「それはちょっと違うぞ」っていうのは、ここにいるメンバーは共通して思っていて。

タカハシ
タカハシ

まさに、僕たちが思っていることを代弁してくれてますね(笑)

治郎
治郎

だから、代々木という場所のコンテクストも踏まえた上で、「これはいい」と思える商業の形を成立させるって視点で、南兵衛さんも「座」という軸を構想したんじゃないかと思っているんですよ。

南兵衛
南兵衛

まあ、ピンポンですよ(笑)

「ふるさと」がチラ見え!?

ミッチェ
ミッチェ

ちなみに先ほどローカルの話もありましたけど、今回は「ふるさと」という言葉をキーワードに置いていますが。

治郎
治郎

原宿は実際僕のふるさとなんですけど、ふるさとって「変わらないところ」ってイメージあるじゃないですか。でも、ここって恐ろしい勢いでものごとが変わっていく場所で。

南兵衛
南兵衛

確かに、この辺りもだいぶ景色が昔と変わったもんね。

治郎
治郎

常に平家物語状態というか、川の流れのように変わってくっていうのが僕の原体験で。だから、逆に何も変わらない状態にいると落ち着かないというかね(笑)以前タイのバンコクに13年間住んでいたんだけど、何が良かったって、その「ふるさと」感がある場所だったんだよね。「またビルが建ったけど、元々ここ何だったっけな?」みたいな。

遠藤氏さんが過ごした、タイ・バンコクの街
根木
根木

なんか治郎さんっぽいっすね(笑)

治郎
治郎

ちょっとだけ以前の痕跡が残っていたりとか、その残ってるものと新しいものが混在している感じ。多様なものがせめぎ合って、活力がある状態にすごく安心感を持つんだよね。

南兵衛
南兵衛

そもそも「ふるさと」って言い出したのはコーキ君だけど、どういうイメージでそのキーワードを着想したんですか?

タカハシ
タカハシ

わりと直感的に言っちゃったんですけど。7月にアースガーデンで根木さんと制作を手伝わせていただいた時に、渋谷という街がオアシスであり、憩いの場だと思ったんですね。

南兵衛
南兵衛

小規模なステージを作ってもらったんだよね。

タカハシ
タカハシ

3日間ぐらい代々木公園にいたんですけど、思っていた以上に渋谷中の人たちが公園を通り過ぎていて。もう何人通るんだろうってぐらい多様な人たちがいたんです。

「集楽座」会場の外周イメージ。奥が見えるようで見えない、チラリズムの美学が垣間見える
根木
根木

年齢層問わずいろんな人たちが会場に通りかかってね。気がついたらベンチに座っているし、みんな思い思いの用途で使っている場所なんだなと思った。

タカハシ
タカハシ

だから、この集楽座がどういう装いであったらいいのかって考えた時に、そこを通り過ぎる人たちが、どういう体験として受け取るのかというのもすごく大事だと思ったんです。それもあって、治郎さんが言った「チラリズム」ってキーワードは、僕もすごくハマるんじゃないかと思って。

治郎
治郎

ちら(笑)

根木
根木

治郎さん「覗き」がテーマのステージ作ろうみたいな構想出してましたもんね。ハコの周囲に穴が空いていて、外から覗き見るみたいな(笑)

治郎
治郎

東京ラッキーホールね(笑)。今回は覗きがテーマだから。

遠藤氏による19年前にタイで作ったoverhead nightclub(Wit Pinkanchapongと協働)

もう、曖昧でいいじゃない。

治郎
治郎

集楽座の特徴でありチャレンジと言えるのが、「フェス・イン・フェス」という構造なんだよね。元々あるアースガーデンというテンポラリーな街みたいなものの中に、集楽座という領域が生まれる。完全に仕切るのではなく、見えるんだけど見えないっていう。まさに「チラリズム」ですよね。境界の曖昧さがあるのが面白いっていうか。

ステージから放射状にテナントが展開する会場イメージ
ミッチェ
ミッチェ

でもアースガーデンというフリーイベントの中に、チケットが必要な集楽座というエリアがあるわけですけど。実際やりにくさっていうのもあるのかなと思ったり。

治郎
治郎

例えば橋の下なんかも、仕切りがあるようで無いというか。入ろうと思えば入れるわけじゃない。

根木
根木

すぐ入れるね。隙間だらけだから(笑)

治郎
治郎

でも、厳密じゃなくても物事は成立するっていう。素晴らしい品格ですよね。だから今回あえて隙間を作ったり、境界線を曖昧にしたり、いろんな仕掛けは考えているけどね。

南兵衛
南兵衛

やりにくさっていうか、まあ今回はまずチャレンジですよね。外にいても音楽は聞こえてくるし、楽しい余興がどんどん外に出てくるし。そうなれば外側にいる人も、ある意味十分楽しめるわけだよね。

ミーティング時ホワイトボードの記録。「ムラムラ音楽祭」とはなにか
南兵衛
南兵衛

曖昧さって話でいうと、現場でよく言われる「明確にして」って言葉が大嫌いで。お前にとって分かりやすいだけだろって、いつも思う(笑)

治郎
治郎

でも今回は、ふわっとした感じの人しか集まらなかったね(笑)

南兵衛
南兵衛

だから今回はなんかいい感じにグレーなままパスが回っていってる感じがあるというか。

治郎
治郎

グレーというかね。色って混ざり合うとグレーとか黒とか一色になっちゃうわけでしょ? だから混ぜちゃいけないんだよ。印刷なんてまさにそうだけど、混ぜるんじゃなくて、CMYKが隣り合っている状態で全体を構成しているんですよ。だからこそ輝度も彩度も出すことができる。

南兵衛
南兵衛

違いを残すということですよね。

治郎
治郎

「平置き」するってことだよね。英語だと「ジャクスタポジション」って言うんだけど。メルト(溶ける)してるわけでも、マージ(統合)してるわけじゃなくて、パラ(並列)に同居する状態。違うものなんだけど、それらが集まって大きなものを構成しているわけですよ。

ここを「打ち上げ場」とする

タカハシ
タカハシ

今回のブッキングで言っても、まったくジャンルも絞られてない状態だけど、結果的に集楽座らしいラインナップは構成できていますよね。

根木
根木

「〇〇っぽい」みたいな、ラベリングみたいなことはしたくなかったんだよね。

タカハシ
タカハシ

だからこそ、「ただの『にんげん』として、世界と音に出会う。」ってキャッチコピーがハマっているような気がしていて。多くのフェスがラインナップありきで始まると思うんですよ。「これだったらヘッドライナーを呼べて、集客も見込みが立つからやりましょう」って。

根木
根木

商業的に考えたらそうなっていくよね。

タカハシ
タカハシ

でも集楽座って、そういうふうにスタートしていなかった。みんなでどういう場を作るか、どういう体験を作るのか、どういうものがそこで見え隠れしてたら面白いのかっていうところを、深いところから詰めていって。「じゃあ、誰だったらハマるんだろう」っていう順番でブッキングしていったんで。

ブッキングの経緯やラインナップについては後日詳しく解説予定
根木
根木

みんなの中の共通意識として「こういう人が合うだろうな」とかって感覚が、もうなんとなく分かってたよね。

南兵衛
南兵衛

そういう意味で、最後にもう一歩集楽座らしさを出すとしたら、どんなコンテンツを作っていったらいいんだろうね。まだ呼ぼうと思えばラインナップも増やせると思うし。

治郎
治郎

やっぱあれじゃない? 巨大パエリアとか。50m焼き鳥とか。

根木
根木

「芋煮振る舞います」みたいなのもいいよね(笑)

南兵衛
南兵衛

まあ、やろうと思えばできなくないけどさ。1000人鍋もあるし(笑)

治郎
治郎

まあいろんな要素が科学反応を起こして、「これはいいぞ!」っていう、ロケットが打ち上がるみたいな瞬間が、フェスにはあるわけですよ。だから、ある意味僕たちの仕事は、その「発射台」を作るというかね。

根木
根木

演者がいて、観客がいて、マーケットがあって。全体がどんな状態になって、どんなものが生まれるかは当日しか見られないからね。それがフェスの面白さですよね。

ミッチェ
ミッチェ

この濃いメンバーが揃ったからこそ見られる景色があると言うことですね(笑)。かなり集楽座の魅力を深掘りすることができた対談になったんじゃないでしょうか! それでは皆さん、本日はありがとうございました。

文章:野呂瀬君